2018/12/09 中川奈美さんプロデュースのクリスマスライブイベントに参加してきました

先だって2018年12月9日、歌手/声優の中川奈美さんがプロデュースされたクリスマスライブに参加して、10年以上ぶりに人前でエレクトリックギターを演奏してきました。機材も随分新しいものが増えていて、割と技術的に面白いこともできたので、このブログではそちらをメインに書きます。他じゃできないしね。

ともあれ、会場の雰囲気はこんな感じ。SHELTER KUKOという代々木八幡のカフェをお借りして開催しましたよ。設営も全部出演者と関係者でやりました。カラオケにエレクトリックギターと遠藤百合 (Twitter: @YuriEndoViolin)さんのバイオリンの生演奏でオケを担当し、歌手の須藤まゆみさん、歌手/声優の中川奈美さん、歌手/声優の土屋実紀(Twitter:@miki_tsuchiya)さんの三名が歌われました。その辺のレポートは一番最後にあるのでそちらにご興味ある方は下までスクロールしてください。

華やかな女性陣の後ろでひっそり弾いておりました。今回「気分はライブのバックミュージシャン」ということで、スタジオギタリストの定番中の定番だったGibson ES-335とValley Artsのアクティブピックアップ・フロイドローズ付をチョイス。選択の理由はこの2つで大体バックで演奏するのに必要な音が出るから。

'72 Gibson ES-335

'90's Valley Arts

ES-335は「ブランコ」と呼ばれるフローティングブリッジなのでブルース向けとされていますが、セミアコースティックギターでオールマホガニーなので基本柔らかい音がして、カッティングとかでもストップテールピース同様、甘いセミアコサウンドが得られます。Valley Artsはアクティブピックアップ+フロイドローズなので基本歪ませるとギラッとしたヘビーなサウンドが得られますし、クリーントーンではノイズレスで綺麗な音が出ます。いつもはヘビーロック用途が多いですが、今回はアクティブピックアップを使ったスタジオミュージシャン的なクリーントーンなどでも活躍してくれました。

さて、いつもと違うのはここから。15年ぶりのエレクトリックギター使ったライブ、しかもバックミュージシャンです。色々検討した結果、今回ギターアンプはアンプシミュレーターを使うことにしました。理由は主に2つ。

  • アンプの音圧でせっかくのお歌を台無しにしたくなかった。早い話がギターがお歌に被りすぎるのを防ぐにはアンプシミュレーターからPAに直接ライン入力する方がコントロールしやすいと考えた。
  • お歌が非常にバラエティに富んでいて、これをすべて思い通りにカバーするには大量のギターエフェクタが必要になり、物理的に準備期間が不足する。

後運搬が大変とかもありましたけどね。それよりはお歌の邪魔をせず、音色の切替も迅速に出来る、ということを一番に考えました。

しかも今回は専用ハードウェアではなくiPad Pro 10.5でアプリを使ってみましたよ。譜面表示アプリも併用して楽譜もiPadで表示させました。どういう風にやっているかはこの後紹介します。CPU消費はiPad Proだと10〜20%程度でまったく問題なし。老眼なので(笑)目の位置に持ってくる必要があり、マイクスタンドにikmultimediaiKlip Xpandを取り付けて使用しました。アンプシミュレーターアプリは横画面、楽譜表示アプリは表示面積を大きくしたければ縦画面になるのですが、左のようにiKlipだとくるんと回転させやすいのでチョイスしました。

SLO100

BIAS AMP 2から利用できるSLO 100。一番ヘビーな書き下ろし新曲「DIAMANTE」などで使用した今回一番ヘビーでディレイもガッツリかかった音色。Soldano SLO100のシミュレーションで、いかにもなミッドレンジの濃さが押しだし強くて、それでもお歌の邪魔になるプレゼンス帯域は控えめで扱いやすかったです。

’67 Dumble Clean

同じくBIAS AMP 2の購入者だけ利用できるHaward Dumbleのシミュレーション。クリーントーンが非常にファットなので、「ちきゅうのこども」などでコーラスとディレイをかけて使用。Valley Artsとの組み合わせは非常によかったです。

’69 Plexiglas

こちらはBIAS FX MobileからのMarshallプレキシオールドアンプのシミュレーター。いわゆるハードロックに近い割と歪んだ音色に使用。ワウ有/無など幅広く使えました。

’59 Tweed Lux

恐らく’59のツイードFender Deluxeをシミュレートしていますが、もう少しきれいめの音で、若干クランチ気味の設定にしています。主にワウ有/無のリアピックアッププレイで使用。

’59 Tweed Lux

こちらはアンプは同じながら設定とエフェクタが異なります。同じアンプで異なる設定+エフェクタを組み合わせて後述のBluetoothペダルで瞬時に音色を切り替えられるのがアンプシミュレーターのいいところですね。こちらにはコンプレッサーが深めに掛かっていて、フェイザーが常時ONになっています。主に須藤さんの16ビート曲をES335のフロントピックアップでカッティングプレイするために用意しました。

という方針の下、選んだのはiPadのアプリpositive grid社のBIAS FX Mobile。前からギターアンプシミュレーターは試していたのですが、まあまず録音では使いません。後からミックスできるので、真空管特有のキャラクターと空気を通った音をきっちりキャプチャーしたいからです。しかし、ライブでお歌の邪魔をせず、いい感じのバランスと音色でギターを鳴らす、という目的ではこのBIAS FX Mobileはとてもよかったです。なんというか、positive gridの製品てどれも割と落ち着いた音で、プレゼンスが耳に痛くないんですね。他社の製品はもっと音がギラギラしててギタリストには好みなんでしょうが、正直今回の目的には合わないと思いました。後、BIAS FX Mobileはアンプの前後にエフェクターを複数配置するのが一番わかりやすく、エフェクトをからめた音作りも作り込みやすかったので試行錯誤が少なかったです。

positive gridの製品がユニークなのは、アンプのつまみレベル以上のカスタマイズを別売のBIAS AMP 2 Mobileというアンプカスタマイズアプリで行える点。これは確か競合製品にはない機能。具体的にはスピーカーキャビネットをライブラリから選択できたり、マイク選択・マイクの設置場所の設定ができるだけでなく、アンプの調整時必須のバイアス調整を行ったり、真空管の種類をプリ/パワー共に選択できたり、整流管とトランジスタを選べたりと、元の音よりもうちょっと好みの感じにしたい、という作業が電気知識なくてもできてしまうのです。SLO100とかはかなりいじりました。後スピーカーキャビネットも結構変えています。

という構成でiPadを使うことにしたわけですが、iPadのアナログ出力はよいのですが、演奏中に抜けるとか困りますし、ギター入力と出力をアナログ4極コネクター分岐させて使うのはかなり不便だし端子にも負担がかかります。なので数多くのiPadでも使えるオーディオインターフェイスが発売されていますが、今回選んだのはこちら。XsonicのXtoneです。聴いたことない中国系メーカーですが、ハイエンド・プロ用機器の大手代理店であるオールアクセスが扱っているのでまあ大丈夫だろうと。時間もなかったのでえいや!でポチりました。Smart Stompと銘打たれていて、ぱっと見ギターエフェクターみたいですよね。

上面にはストンプボックスで使われるスイッチが3つ。要するに両手が塞がっているギタリストが使用する前提で設計されているわけです。なぜこの発想の製品が今までなかったのか不思議ですが、この3つのスイッチを使ってBIAS FX Mobileのプリセットを切り替えたり、BIAS FX Mobile内のストンプボックスをOn/Offできます。今回プリセット切替は後述のBluetoothペダルに任せて、XtoneのスイッチはストンプボックスのOn/Offに使用しました。

部屋で音質チェックしても普通の24bit/192kHzのオーディオインターフェイスとして使えるレベルで、今後はiPadアプリ音源を録音する時これを使ってもいいなと思っています。みんなが気になるレイテンシーですが、BIAS FXをLow Latencyモードに設定してほぼストレス無しに16ビートのカッティングができました。

Xtoneはエクスプレッションペダル端子も実装しているので、エクスプレッションペダルを接続してBIAS FX Mobile上で設定すれば、簡単にボリュームペダル操作ができます。ボリュームの位置はプリセット毎ディレイ前か後か設定でき、アナログ信号を通す普通のボリュームペダルより融通が利くので、大型でしっかりした写真左のKorg XVP-10をエクスプレッションペダルモードで接続してボリュームを変更していました。バイオリン奏法とかもやりましたよ。BIAS FX Mobile上で設定すれば、もちろんワウペダルとしても使えるのですが、ワウだけは踏み心地とかワウの効き具合とかの好みが違ってコントロールし辛かったので、今回唯一のアナログストンプボックスとして写真右のFulltoneCLYDE Deluxe WahをXtoneの前に設置しました。ローノイズかつ踏んだ時のリアクションも意図した通りで、使いやすかったです。

次に譜面表示アプリですが、これはもう定番のPiascoreを使いました。PDFでもJPEGでもPNGでも何でも読み込んでくれます。セットリストを作成して、その通りの順番で譜面を表示してくれますので、曲毎にいちいちリストに戻って選択し直しとか不要です。指やApple Pencilで譜面に手書きで書き込みもできますので、練習時に写真の通りガンガン書き込みました。ページ送り速度は速く、今回はそこにストレスを感じることもありませんでしたよ。スワイプでもページめくりできますが、ギタリストは両手が塞がっているので、写真左下のikmultimedia、iRig Blue TurnというBluetoothコントロールペダルを使用しました。こちらは譜面送りを想定した2スイッチペダルで、iPad Proと接続してPiascoreの譜面送りをiRig Blue Turnで行う設定にして使用しました。他の方のレビューで静かな曲で踏んでもスイッチング音がしないソフトタイプということだったので、こちらを選びました。

写真中央のpositivegrid BT-2は前述の通り、Xtoneの代りにプリセット切替スイッチとして使用しました。Xtoneだと左右のスイッチを押す時中央のスイッチを踏んでしまったり、中央のスイッチを踏んだら左か右のスイッチも一緒に踏んでしまうことがあったから。今回プリセットの切り替えミスは楽曲を台無しにしてしまうので、慎重に行きました。譜面送りと共用はできないので、別に用意。Xtoneもそうですが、ストンプボックスと同じタイプのスイッチなので、クリック感があり、切り替わりを確認できるので安心でもあります。

それからチューナー。BIAS FX Mobileにも優秀なチューナーが付いているのですが、いちいち画面から呼び出して・・・というのが煩雑だったので、最近購入したKorgのPitchblack Advanceを使用しました。Pitchblack miniも持っているのですが、Advanceくらいの幅があった方がやっぱり視認性はいいです。チューナーはACアダプタ給電にして、DC出力端子からCLYDE Deluxe Wahに給電しています。現場で必要な電源はiPad用、チューナーと繋ぐやつ、Xtone用の3つで済みました。

これらを下記のAclam Guitarsというメーカーのペダルボードに組み込みました。今回は済みません。とっちらかってて組み込み後のお写真はなし。使ったのはSmart Track S2 + Softcase S2 [w / UNIVERSAL S]という上から二番目に大きなボード。なぜかというと、ワウペダルとエクスプレッションペダルが巨大だから。このボードはよくあるストンプボックスの裏に両面テープでベルクロを貼ってボードに据え付けるタイプではなく、特殊な専用ネジで四辺を固定するタイプで、中村のようにしょっちゅうペダル構成が変わるようなギタリストにはこちらの方がいいと判断したからです。大昔使っていたエフェクトボードとは雲泥の差で使いやすかったです。

 

ライブ自体についてですが、休憩を挟んだ2部構成で全15曲が演奏されました。中村は全曲演奏しましたよ(笑)。ライブ中ずっと立ちっぱなしで片足でワウペダルを踏み続けていることが多かったので、体力的にはきつかったですが、上手なお三方のバックでギターを弾けてとても楽しかったです。お三方ともメチャうまでしたよ。
楽曲もバラエティに富んでいて、オケにギターが乗っているものが多かったのでアレンジを考える楽しさもありました。オケのギターと被らず歌の邪魔をしないよう、ということで、ワウを使って和音少なめでリズミックな演奏をした曲が多かったですね。
こういう演奏は普段あまりしなくて、覚えがあるのは「ドラゴンボール天下一大冒険」というWii向けのコンソールゲームくらいだったので新鮮でした。ES-335がいい仕事をしてくれました。

ということで、出演者の皆さんのご紹介です。右下の1〜4の数字で切り替えられます。

  • 出演者の皆さん

須藤まゆみ

シビアな日本のスタジオで数多くのCMソングなどで実績のあるすごい方です。「SUICAならばSUICAならば」とか「オリーヒロ!」とか誰でも一度は聞いたことのあるCMを多数歌われています。とにかく唸るほど「上手い」のですが、驚かされたのは、「ちきゅうのこども」の録音日が須藤さんの「僕からの宅配便」と同日に行われたので、録音を見学していたのですが、違う歌い方を何回かトライして、どんどん曲を追い込んで仕上げていってしまうのと、ライブ当日、「ちきゅうのこども」録音の時はやらなかったソウルフルなフェイクをガンガン即興で入れ込んで盛り上げていたことです。カチッと譜面通りに歌えてかつかっこいい即興もガンガンやれる人ってほとんど見たことないです。テクニカル系ボーカルフェチの中村はウハウハして聴いておりました。

中川奈美

中川奈美さんはご存じテイルズシリーズや椎名豪の楽曲で無国籍風コーラスを披露する歌手/声優さんです。今回のライブのプロデューサーでもあります。多方面でご活躍されていますが、須藤さんとはまた違ったうまさのある方です。無国籍風コーラスなども極めて個性的なのが魅力なんですが、それには理由があって、中川さんは宇和島出身で宇和島民謡の歌い手さんなんですね。つまり日本人の歌手には珍しいルーツミュージック持ち。だからぱっと民謡的なアクの強い難しい歌い方がすっとできちゃう。ルーツミュージックのない中村には羨ましい限りです。Uwajima-Sansaなんかバックで演奏していて鳥肌でしたよ。でもそれだけじゃなく、「ひとりじゃない」ではとてもストレートなきれいな声で歌われていました。

土屋実紀

土屋実紀さんは前職の会社OBとつながりが深く、共通の知り合いが多いのですが、見た目も声もとにかく華のある方です。パンと声を出すとすっと華やかな声が抜けてくる感じ。もちろんすごくお上手でもあるんですが、上手さより華やかさの方が前に出る得な方ですね。「花のような君」でも高域の伸びがとても素敵だったので、これを邪魔しない演奏を心がけました。とても楽しい方で、すぐお笑いに走ろうとするので周りがしょっちゅう自重を求めています(笑)。実はすごく真面目な方なんですけどね。

遠藤百合

遠藤さんのバイオリンの音はとても優しいです。バイオリニストの多くはいい意味で自己主張が強いソリスト気質の方が多くて、音も主張が強くてオケに馴染みにくいことが多いのですが、遠藤さんのバイオリンは録音の時もリバーブをかけた以外ほとんど何もせずにすっとオケに馴染みました。すごく驚いたことを覚えています。今回も要所要所で出るとこは出て引っ込むところは引っ込むメリハリのある演奏でライブを盛り上げていました。

最後に皆さんお待ちかね、ライブ写真一覧です。たくさんあります。例によってタカハシヒロカズさん撮影です。お楽しみください。

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